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Re島めし 屋久島編 第2話

2017.06.09 (FRI) 屋久島 Re島めし

こころに自然を宿すこと。

夕食を食べに、母屋にあるダイニングに入ると、薪ストーブを囲むようにしつられた木のテーブルに案内していただいた。オーナーの今村さんが、さっそくストーブに火をつけてくれた。

「屋久島は“水の島”って言われてます。だから、暮らしには火を積極的に取り入れて、バランスをとると良いみたい。」

水の島だから、火を取り入れる。なにその、かっこいいかんじ……。

ここで燃やしているのは、今村さんがそこら辺で拾ってきた枝。貴重な屋久杉の枝も混ざっている可能性もある、って考えたら、なんて贅沢!

「都会って、何でもかんでも、誰かのものでしょ?モノでも、土地でも、時間すら、誰かのもののように感じることがある。でも、ここには、誰のものでもないものがいっぱいあるんです。この枝もそうだけど(笑)、とにかく自由にゆるゆるいられるんですよね。たまに本土に行ってホテルなんか泊まると、部屋が密閉されてるみたいで、苦しくてしょうがない。」

今村さんは、24歳の時に屋久島に移住し、それから15年、「都会と島をコネクトする仕事ができれば」と、ゲストハウスを拠点に活動されている。

「この島は、人を選ぶんです。どんなに移住したくても、なんだか縁がないって人もいれば、人生の節目でなんとなく屋久島に来ちゃって、まるで呼ばれてるみたい、って言う人もいます。」

「子育て中、ってこともあって、都会の便利な環境に心が揺れることもありますよ。すぐ病院に連れていけるとか、おじいちゃんおばあちゃんに孫を会わせられるとか。未だに、自分のアイデンティティは都会にあるかなって感じます。でも、だからこそ、屋久島から伝えていきたいことがあるんですよね。」

それは、「来てくれた人のこころに、自然を“宿す”こと」だと話してくれた。都会で見かける、区切られた、つくられた自然ではなくて、屋久島には、まるで命そのもののような、「誰にも編集されていない自然」があるという。大人も、こどもも、編集されていない自然を体感して、こころに宿して帰ってほしい。そういう思いで今村さんは屋久島に居る。

「自然を宿す」って、とってもいい感覚だなと思った。記憶に残すだけじゃない。自然から感じ取ったものを、自分のなかで育てていくみたい。屋久島の雨でしっとり深まった緑が、誰にも編集されず、こころのなかで静かに存在し続ける。人間、こころにそういうスペースを持つことは、絶対に必要だと思った。

じっくり今村さんと語り合いたいところだったけど、はらぺこのおチビたちがうるさいので、止む無くご飯タイムに。キッチンからはすでに超良いにおい。

料理長の齋藤さんが、その日手に入った屋久島産の美味しいものでごはんを作ってくれる。サポートするのは奥様。この日は、名物のトビウオも!

わたしたちが図々しかっただけかもしれないけど(笑)、キッチンがオープンな雰囲気だったので、食材やつくりかたについていろいろ聞きながら食べられる。単純に出てきたものを「いただきます」するより、発見があるし、ありがたいし、美味しさが増すものだ。なにより、料理上手の友人の家でごはんを作ってもらってるみたいな気分で、めちゃくちゃたのしい。

どれもこれも素材の味を邪魔しないやさしい味付けで、東京じゃなかなか食べない食材も多く、こどもたちに食べさせられて本当に嬉しかった。外食が続いてしまうのは旅行中だと仕方のないことだけど、この日のごはんは、外食っていう気がしないぐらい、ほっこりできるごはんだった。

食事中、今村さんが歌を聞かせてくれる。ここで島に来た感が500%ぐらいに。つくづく満足な夜だった。

 

翌朝、夕飯とおなじ場所で朝食をいただいた。居合わせた別のお客さんと「きょうはどちらへ?」「まだなんにも決めてないけど、とりあえずドライブして森でも眺めに行きますかね〜」と、会話。そこのおうちの子どもたちと、うちの子どもたちとで、たんかんジュース作りをお手伝い。しぼりたてのたんかんジュースは体中にしみわたる美味しさで、これさえ飲んどけばきょうは大丈夫!ってぐらい、栄養いっぱいの味がした。

鹿が教えてくれた、大事なこと。

朝食を終え、しとしと雨の降る中向かったのは、鹿の解体や加工をおこなう「ヤクニク屋」さん。前日に西部林道で何頭もの鹿に出くわして、「鹿ちゃんファミリーかわいい〜!」なんてキャッキャしたばっかり……これはなかなか、こどもたちに伝え甲斐のある取材になりそうだ。

ここがそうなの?と思うほど、小さな場所に、「ヤクニク屋」はあった。中を覗くと、作業台の上に肉がゴロンと乗せられ、お姉さんが次々ナイフを入れてさばいていた。

「あれ、鹿だよ。」じっと黙って中を覗き込んでいるこどもたちに教えるのは、なかなか勇気がいった。

皮がはがされ、頭は落とされていたので、動物というよりは、大きな肉のかたまり。それでも、鹿を見たばかりのこどもたちには、鹿をイメージできる程度の形はとどめている。「え〜!何してるの!?」「なんで切ってるの!?」「死んじゃったの!?」「やっつけたの!?」「かわいそう!」次々怒りながら疑問をぶつけられた。いちばん上のおねえちゃんは、わたしのことをボカスカ殴ってきた。やっぱり刺激が強すぎたかな……。

取材を始めてまず最初に、「鹿を解体してるところ、こどもたちといっしょに少しだけ見ました。こどもたちにどうやって話そうかなー、と思ってます……」と、ヤクニク屋の田川さんに言うと、さらっと

「かわいそう、って思うことは大事なことです。当然だと思います。」

と、言われた。そりゃそうだよな。命が奪われたことは、純粋に、悲しいことだもんな。重要なのは、その先にあること。なぜそうしたか。そこから何を受け取るか。ママがしっかりお話を聞いて、みんなに話してあげなきゃ。朝から衝撃をうけたこどもたちは、少しのあいだパパに遊びに連れて行ってもらい、わたしは田川さんのお話を聞くことに。

屋久島では、年間5000頭ぐらいの鹿が捕獲されていて、ここ「ヤクニク屋」に持ち込まれるのは、その中の1割〜2割だそうだ。

「ここでの作業の流れとしては、鹿が持ち込まれてすぐに解体所で皮と内臓をります。それから、でっかい冷蔵庫で2〜3日保管。とどめをさしてすぐの肉だと、硬いんです。余分な血を抜くためにも時間が必要。2〜3日経って肉質が柔らかくなったものを、精肉。真空パックにして、商品にしています。」

あんまり想像したくはないんだけど、でもやっぱり、血とかいっぱいで、それはそれは壮絶な作業なんでしょうか?

「猟師さんが、捕獲した現場で血抜きまで終わらせて持ってきてくれるんです。血が腐ってしまうと、肉が臭くなるので、なるべく早く血を抜いたほうが良い。」

猟師さんってそんなことまでするんだ……山でそんなことをしてたら、他の動物に恨まれてしまいそう。実際、猟師さんたちがオレンジ色の服を着ていることもあって、屋久島の動物たちはオレンジ色に敏感なんだそうだ。ところで、そもそもどうやって捕まえるものなんでしょうか?やっぱり、バーン!と撃つ?

「鉄砲は少ないんですよ。弾の破片が混ざってしまうので、鉄砲で捕まえる場合は、頭か首を打ったものしか肉にできません。それは、鹿児島県として決めているんですね。今は、ほとんどの鹿が「くくり罠」っていう、足をくくるワイヤーで捕ってます。」

「年間約5000頭捕ってますけど、本当はもっと捕って欲しいんです。今数を減らしておかないと、鹿にとって良くない。例えば、“クラッシュ”を起こしてしまったり。クラッシュっていうのは、鹿の数が増えすぎて、鹿たちの食べ物がなくなって、みんな餓死しちゃうことです。トータル的に考えると、鹿を守るために、今は全体の数を減らしているところ。誰も好き好んで殺している人はいないと思います。」

朝、ここへくる途中にも、鹿を見つけた。道路からさほど離れていない、民家の間の畑。一匹だけで、コソコソしていた。道に出てきたらひかれちゃうよ、と、心配になった。

「そうなんです。鹿の数が増えて事故も多くなりました。山から下りてきちゃうんですね。畑のものがおいしいの、知ってるんですよ。山の植物ものより、畑の野菜のほうが、アクも少なくて消化にも良いし、肥料を撒くので栄養価も高いんです。それでやっぱり、里の方に下りてきちゃいますね。」

美味しいものを知ってる、鹿。ってことは、その肉もやっぱり美味しいんだろうか。お恥ずかしながら、食べたことないんですけど、ぶっちゃけどんな味なんですか?

「臭みのない赤身の肉。脂身がない部分なら、牛って言っても分からないですよ。いくら食べてももたれないし、低アレルゲンなので、牛とか豚が食べられない人でも全然大丈夫。特に高齢者にオススメなんです。高齢になったら肉を食べるのがいい、なんて言いますけど、食べるなら是非鹿肉が良いと思いますね。」

「屋久島には、鹿肉を提供しているレストランが10〜20店舗ぐらいあるんですよ。でも、加工をしているのはここだけ。あとは、猟師さんが個人的に食べてます。鹿肉の扱いは、猟師さんの奥さんがいちばん上手かもしれない。骨ごと煮込んでスープをとって、味噌煮込みにするのが地元の料理ですかね。」

そういえば、猟師さんって、資格とかいるんだろうか?

「国家資格です。筆記試験を受けるけど、そんなに難しくないです。私も一応、持ってます。環境省の非常勤でしばらく働いていましてね。その前には、九州大学で研究してました。」

「植物の「保全生態学」っていう研究をしていたんです。植物を守るためには、それを食べてしまう鹿を捕らないといけないということで、鹿についても興味があって。でも、ただ鹿を捕るにしても、誰かがお金を出してくれる訳ではないと。じゃあどうすればいいかっていうと、捕った鹿をお金に変える仕組みが必要なんです。その仕組みがないと、森は守れない。だからここで、仕組みづくりをうまくいかせたいなぁと思ってやっています。」

「でも、儲からなくて大変なんですよ。豚とか牛とかと違って、一頭からとれるお肉の量が10%〜15%くらい。少ないんです。それに、仕組みがうまくいってここみたいな場所が増えれば、もっと鹿が捕れるようになるかっていうと、そういうわけでもない。実は、今年は捕獲があまり進んでいません。「スマートディア」が増えてるんです。」

「鹿は、人間に捕まった仲間を見ているわけです。「ああ、あいつ捕まったな」って。それでその場所には近寄らなくなる。賢くなってるんですよ、鹿が。猟師さんも工夫して、エリアを変えて罠を置くんだけど、それもすぐ学習しちゃうみたいで。」

鹿の予想を超えることをやっていかないと、捕まえられない。なんか良い方法はないかな……たとえば、ドローンを使って脅してみるとか!追い込んで、その先で待ち構えるとか!どうでしょう!?

「お、すごいですね。実際あるんですよ、ドローンを使って追い込む研究。屋久島ではまだやってませんが、東北のほうでは実験的に取り入れてます。」

うわあ、本当にあった(笑)得体の知れないドローンに追いかけられたら、鹿はめちゃくちゃびっくりするだろうなあ。やっぱり、ちょっとかわいそう、という気持ちがわいてくる。

鹿の産業は、食用の肉ばかりではない。犬用のペットフードとしても人気が高いし、骨を使ってスープをとったラーメンの開発もすすんでいる。革も質が良く、職人の手によってとても風合いのある革製品が作られている。

「一湊っていう街に、廃校になった中学校があって、いまそこの教室で椎茸を育てているんです。もっと改装して、別の教室でも鹿の革製品を作ったりとか、いろんな産業を生み出していきたいなと。鹿に関しては、肉も骨も皮も、全部売れるようにしないと儲けが出ないので。」

「屋久島の人は、売り方がへたくそなんですよね(笑)鹿もそうだけど、たんかんでも、トビウオでも、モノはいいから勝算はある。でも、なにせ少しずつしかないので、求められたとしても、対応しきれないのが現状です。」

大量生産で簡単に手に入ってしまうものより、少しずつ作られたもののほうが圧倒的に魅力があると思ってしまうけど、産地としては、もどかしさを感じることもあるのかもしれない。Re島から発信していくことの、新たな側面を教えてもらった。

次の場所に移動する車の中で、こどもたちに、「ママ、鹿の話いっぱい聞いてきたよ」と言うと、「鹿って、食べるの?」と長女に聞かれた。

食べるよ。おうちで鹿を食べたことはないけど、いつも食べてる牛や豚も、さっきの鹿とおんなじようにお肉になるんだよ。にわとりも、お魚も、貝も、野菜も、形はいろいろだけど、おなじ。生まれて、育って、まだ生きてるのに、人間が食べるために、死んじゃうんだよ。死んじゃうことは、悲しいことだね。でも、みんながおいしいものを食べて元気でいてくれるのは、ママにとっていちばんうれしいことだよ。だからママは、頑張ってごはんを作るんだよ。牛や豚や鹿は、それを応援してくれてるんだって思ってるよ。ママと鹿は力を合わせるから、みんなはいっぱい食べて元気もりもりになってよね。

 

食べものになってくれた命と、ママやパパの頑張りが、あなたの一部になっていくんだよ。大きくなっても、ひとりで生きてるなんて思わないでくれたらいいな。ちょっといい話してみたけど、上手に伝えられたかは不明。こどもたちから特に反応はなし……(笑) でも、このあと行ったレストランで、鹿肉のボロネーゼを取り合いっこしながら食べて「やっぱり鹿うまい!」と、生意気に言っていたので、今はとりあえず、それでいっかぁ、と思った。

 

Re島めし とは。

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。
島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

五島列島から、対馬、そして壱岐へ。
同じ離島と言えど、風土や文化が違えば、こんなに食も変わるんだ!
それぞれの島の魅力に出会いつづけたRe島めしの旅は、
いよいよ最後の目的地、屋久島へ。

食育インストラクター。3児の母。各メディアでのレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての他、情報番組コメンテーター、コラム執筆など、多方面で活動中。著書に「嫁姑ごはん物語」「和田明日香のコストコごはん」など。
和田明日香オフィシャルブログ
公式インスタグラム @askawada
 
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

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