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Re島めし 壱岐編 第3話

2017.05.03 (WED) 壱岐 Re島めし

壱岐、売ってます!おかあさんたちの朝市。

旅先でスーパーや商店街に行くと、わたしの知らない、誰かにとっての“日常”をのぞいてるみたいで、どきどきする。置いてあるモノも、時間の流れ方も、人と人のやりとりも、何か違う。わたしの知らないところでも、日常、ってのは繰り返されていて、わたしにとってすべてだと思ってることが、誰かにとっては何でもないことなんだな、とか、思ったりする。

ここは、壱岐の朝市。港にあがった魚を、おかあさんたちが加工して、ここで手売りしている。「おいしいよ〜、食べり〜」と言いながら、売り物の干物をはさみで細かくして、次々味見させてくれる。出来立てなのかな、はさみで簡単に切れるぐらい柔らかい。噛むとジュワッと魚のうまみ。

「やわらかくて味がギュッとしとるよ。干物はもつからね、冷凍しとってもいいし。こども3人いるなら、干物、3枚にオマケしてあげるわ。みんなで食べり〜。」

おかあさんたちが魚をひらいて干すとこ、見てみたい。どんな話をしながらやってるのかな。おかあさんたちの日常に、混ざってみたいなあ。

朝市を抜けると、こじんまりとした商店街に出た。八百屋さんで店番をしていたトマト色のお兄さんが、トマトを食べさせてくれた。トマトのパックには「ままなかせ」って書いてある。ママとしては、聞き捨てならない名前である。

「もうないよ〜、勘弁してよ〜、って、ママが泣いちゃうくらい、こどもたちが欲しがる美味しいトマト。甘いよ!」

たしかに、これは取り合いになるわ。今まで食べたトマトの中でダントツ1番に甘かった。こどもがいっしょだったらきっと一個も食べられないけど、この時だけは独り占め。商店街をブラブラしながら、あっという間に1パック食べちゃった。

商店街のはじっこに、大幸物産というお店があって、きれいなお姉様たちがお出迎えしてくれた。

謎の海女マネキン……暗い時だったら、怖くて走って逃げるよ。

大幸物産は、「大幸」というレストランもやっていて、生ウニ丼が名物……らしいんだけど、残念ながら、時期外れ。でも、「おつゆだけでも飲んでって」と、店先に並ぶ海藻をお味噌汁にして味見させてもらえることに!ウニは海藻を餌にしてるんだから、これこそ美味しいウニの元、ってことだ!(と、自分に言い聞かせる……ウニへの未練……)

あああ良いにおい。悲しいことがあったらこのにおいに励まされたいよ、ってぐらいの、良いにおい。海藻のぬるぬるで、おつゆ全体がとろんとしている。「体に良い!」を、これでもかと感じて、一口すするたび、どんどん元気が出てくるようだった。やっぱりお味噌汁って大事だなあ。

朝市で、商店街で、ちょこちょこいろんなものをつまみ食いしてたら、胃が元気になって本格的におなかが空いてきた。なんとタイミングの良いことに、次に向かうのは、壱岐牛が食べられるお店「うめしま」さん!肉だ!にく食うぞーっ!

……と、その前に、代表である、梅嶋さんにお話を伺った。

切なさと愛しさと美味しさと。

「もともとうちは牧場だけだったんです。わたしが小学生の時に、父がこの店を作りました。私はといえば、パーティーでたくさんの人に料理をふるまうような、華やかなコックさんになりたかったんですね。長男だったので、牧場を継ぐのかな、というのはずっとありました。でも、どうしても夢を諦められなくて、料理の学校に行って、福岡のホテルに就職が決まって。憧れの職場で研修もしたんですが……結局、強制送還されて、この店にきました(笑)」

「当時は、福岡のサービスと田舎のサービスとのギャップがすごくあって、苦労しました。でも、島だからこそできる商売のやり方もあるんじゃないかと、試行錯誤しながら、22年が経って、今に至るという感じです。」

壱岐牛は、年間で500頭~600頭ほど市場に出ていく。小さい島から1日1頭以上と考えると、多いような感じもするが、例えば佐賀牛なんかは、数千頭というレベルで出荷されている。壱岐牛の引き合いは強く、高値で取引されているそうだ。

「360度海に囲まれている壱岐は、子牛を育てる環境にとっても適してるんです。牛にとって一番大事な栄養素って、ミネラル、塩分なんですね。なので通常、牧場では、牛のエサの横に岩塩が置かれています。それを牛は飴のようにペロペロ舐めると。

でも、壱岐の牛たちは、塩分を豊富に含んだ土壌に育ち、海風にあたった牧草を食べています。塩を舐めなくても、自然のナチュラルなミネラル、塩分を体内に取り込めてるんです。」

「それから、ゆっくりと静かな島ですので、ストレスもない。牛にとって一番ダメなのが、ストレスなんですね。牛たちはちょっとした音にもビクッと反応して、それだけで体重が2キロ落ちるんですよ。本当に繊細で、臆病です。」

どしんと構えて、ぼーっとしていて、大抵のことは動じなさそうに見えるのに!牛って、意外と知らないことがたくさんあるなあ。産まれてから、どれぐらい育てて、出荷されるんだろう?

「6、70キロで生まれて、最後肉牛になるときには、700とか800、900キロになりますね。それまでだいたい20か月のお付き合いかな。小学生のころは、自分のところで飼っている牛を食べる、ということに、非常に抵抗がありました。名前を付けて餌をあげたりして、かわいがるでしょう。でもいつの間にかいなくなってる。親父に、太郎どこに行った?って聞いても、「いやー外に行ったかな」なんて、教えてくれないんですよ。」

頭の中で、ドナドナが流れ出す……

「でも、大人になって思いました。人間でも、牛でも、みんな何らかの形でこの世に命を授かってくるわけです。家畜用に生まれてきた牛っていうのは、美味しいと食べてもらうことで報われる命なのかなと。わたしたちに出来ることは、この子たちが皆さんのお口に入るときに、とにかく美味しくしてやること。絶対腐らせたりなんかしちゃいけないし、できるだけすべての部位を使い切るように調理してやる。育てて、出荷するだけだと、店の都合でどうされてしまうかわからない。最後まで納得いくように自分たちで料理して、お客様に食べて頂くところまで見届けたいという思いで、父はこの店をはじめて、わたしも継いでいます。」

命をいただくということ。わかっていたように思うけど、梅嶋さんの誠実な思いが込められた言葉で語られると、苦しいぐらい、胸が熱くなった。

「こんな話のあとで食べて頂くのもなんなんですが(笑)そろそろお料理もお出ししますね。牛肉で、一番代表的なヒレ、これは言うことなく美味しいと思います。あとはモモ肉、なかでもランプ・イチボ。」

お、イチボといえば、レミさん!誕生日会や、お正月など、家族が集まるたびに作ってくれるローストビーフは、必ずと言ってほどイチボで作っている。それも、絶対食べきれないぐらいの量を取り寄せる。「そういうことなら……」と、梅嶋さんが厨房から持って来て見せてくれたのは、さすがのレミさんもきっと見たことがないくらいの量のイチボ!なんと10キロ!

前の日、ビューホテルの料理長に「壱岐牛は、噛むとサクサクして美味い!」と聞いていたけど、なんとなくわかったような気がする。歯切れが良くて、脂もさわやか。焼肉でいただく赤身やホルモンはどれも悶絶な美味しさなんだけど、テールスープもこれまた絶品で、良質な牛肉ならではの、濃厚で香り高いスープに、壱岐牛の実力を感じた。欲張って頼みすぎちゃったけど、残さずしっかり「ごちそうさま」しました。牛よ、生まれてきてくれて、ありがとう。


 

確実に体重が増えたのを感じながら、いっちょ腹ごなし。一支国博物館へ。

遺跡発掘体験ができるスペースや、発掘された遺跡が収容されている棚を見渡せる、ラボのようなところもあって、たのしい。

写真では撮れなかったけど、壱岐の歴史を学べる映像のしかけが、すごかった。ガーッてなってバーンてなってキャー!てなった。わかってます、きっと1ミリも伝わらない。でも、本当に、ここ最近でいちばん鳥肌がたったので、書かずにはいられない。壱岐に行ったら、是非、見て体験してみてください。

ここは、豊かさがめぐる島。

さて、壱岐の最後に訪ねたのは、アスパラ農家の山口さん。のどかな田んぼ道を通り抜けて着いたアスパラ農場は、すこし標高が高いところにあるようで、山のあいだから海が見おろせた。通り抜ける風がとっても気持ちが良かったけど、アスパラのハウスの中に入ると、急に蒸し暑い。そして、ズラッと並ぶアスパラたちが、なんだか健気でかわいい!

「これは去年の3月に定植して、はじめてできた分。1年間は収穫せずに、根を張らせて太らせとくんです。そして今年になってようやく、収穫。でもね、去年は秋に雨が多かったでしょう?だからなかなか育たないで、小さいのばっかり。」

サイズどうこうより、とにかく元気で美味しそう!近所のスーパーでは、こんなにいきいきとしたアスパラはなかなかお目にかかれない。でもどうやら、東京で買うアスパラは、壱岐産である確率が高いようだ。

「東京の大田市場では、壱岐のアスパラが一番の出荷量じゃないですかね。壱岐でとれるアスパラの8割は東京へ行きますよ。壱岐がアスパラを始めて、20何年かな。最初はハウスじゃなかったんです。露地栽培だった。でも雨が降ると、病気が出やすくてね。雨よけのためにハウスをするようになったら、温度も安定して1年中出荷が出来るようになって。」

「壱岐は、稲作があって、その藁を牛が食べて、そして牛の糞を野菜の肥料にして、って、島の中で循環するようになってるんです。他の所に比べて、壱岐には牛がいるってところがいいんです。糞を肥料にできるのもそうだけど、牛のための飼料を作るし、牛が草を食べるから、土地が荒れなくて済むんですよ。牛さまさまっていう感じね。」

島の環境が牛を育てて、牛は農作物が育つのを助けてくれる。自然に循環する、持ちつ持たれつの関係。なんて恵まれた島なんだろう。壱岐でできないことはない気がしてくる。壱岐が「自給自足の島」と言われているのが、ここへきてストンと腑に落ちた。

アスパラを収穫して、その場で茹でて食べるという、なんとも贅沢な経験までさせてもらった。

さっきまで土からニョキ!と力強く生えていたアスパラ。とってすぐ茹でて、その生命力ごとガブッとかじる、しかも、青空の下で、というシチュエーションが、美味しさを盛り上げてくれたような気がする。もう二度と、あんなに美味しくアスパラを食べられることはないだろうな。

山口さんは、昔ボランティアで郷土料理を教えていた経験もあるそうで、Re島めしのヒントになるレシピのアイデアをたくさん教えてくれた。

「壱岐の郷土料理と言えば、壱州豆腐のよごしって言って、白和えの味噌バージョンね。豆腐とお味噌を混ぜて、野菜を蒸して和えあるんです。白和えと違って、よごしの場合はイカとかも入れてね。あとは、ひきとおし。壱州の地鶏で野菜を煮込んで食べる、鍋料理ですね。」

「アスパラは、すり身に入れたり、白玉団子に入れたり、ポタージュにしたり。最近はアスパラガスを使った地産地消のコンテストもあって、特賞の人には壱岐牛がプレゼントされるっていうんで、いろんなレシピが出てきたけど(笑)やっぱり、アスパラは湯がいてマヨネーズ付けるのが一番おいしいしラクですよ。わたしもアスパラ農家始めてからは、忙しくて、料理なんてちゃちゃちゃ〜でね、平野レミさんの料理も早いけど、みんなあんなもんよね!(笑)」

やっぱりな……。壱岐の素材が良すぎて、みなさん、シンプルな食べ方がいちばん!ってアドバイスで締めくくるんだよなあ。Re島めしレシピ、素材のチカラを越えるレシピができるんだろうか……

壱岐の旅をずっとサポートしてくれた篠崎さんと港でお別れし、福岡行きのフェリーへ。インタビューしているわたし以上に、感動したり、興奮したり、してくれていて、なんてチャーミングな人なんだろう、と思った。またいっしょに、壱岐焼酎、飲みたいな。

さあ。これにて壱岐編、終了。麦と米が発酵して作り出す焼酎。扱い方で美味しさがどんどん引き出される魚。島を豊かにする循環の中心にある牛肉。柚子は、携わる人に、夢や勇気も与えていた。食材の持つチカラのこと、いろんな角度から考え直させられた壱岐のRe島めし旅だった。

 

家それぞれにお気に入りの豆腐屋さんがある、なんて話からもわかるけど、壱岐は、食材と人との距離が近い。食材に対して誠実で、愛情いっぱいな人ばかりで、きっとグルメな人も多いに違いない。壱岐のRe島レシピは、なかなかハードルが高そうだなあ。レミさん、どうしよう!(笑)


※壱岐編のレシピは、5月下旬の公開を予定しています。お楽しみに!

Re島めし とは。

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。
島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

五島列島と対馬でいろんな出会いを生み出したRe島めしの旅。
新たな舞台は「壱岐」。
神社密度日本一の島だから、
食べものの神様もきっと楽しみにしているはず!

食育インストラクター。3児の母。各メディアでのレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての他、情報番組コメンテーター、コラム執筆など、多方面で活動中。著書に「嫁姑ごはん物語」「和田明日香のコストコごはん」など。
和田明日香オフィシャルブログ
公式インスタグラム @askawada
 
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

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