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Re島めし 壱岐編 第2話

2017.04.26 (WED) 壱岐 Re島めし

美味しいものって、なぜ美味しいんだろう。

壱岐の自然に打ちのめされ、戻ってきたのは、宿泊先のビューホテル壱岐。待っていてくれたのは、ホテルの代表であり、料理長でもある吉田さん。壱岐の食材と料理についてお話を伺った。というか、晩ごはんを作ってもらった。

吉田さんは、東京でSE(システムエンジニア)の仕事をされていたが、30代で壱岐に戻り、ご両親がやっていた旅館を引き継いで、ホテルを始めた。

「わたしが料理をやることになって初めに、壱岐にいる、和洋中の料理人たちを集めて、理事会を作りました。みんなでテクニックを盗みあえて、わからないことはすぐ聞ける。知識をシェアし合える仕組みを作ったんです。そうは言っても、壱岐は食材がしっかりしているから、あまり小細工をしない方がいい。「モノで勝負する」、って方が、多いんですよね。」

ビューホテル壱岐では、まさに「モノで勝負」を味わえる。お食事処の真ん中には大きな囲炉裏があり、そこで食材をさばき、焼いて、食べさせてくれるのだ。

「壱岐のマグロは、築地でも人気が高いんですよ。きっちり神経抜きをするから。神経抜きって言うのは、釣った魚の脊髄にワイヤー通して、死後硬直を遅らせる処理のこと。けいれんを抑えられるから、筋肉を壊さずに、自然な美味しさが残せます。神経抜きは、漁師から魚への、愛ですね。」

 

「こっちは寒ブリ。いいブリは皮を引いたらわかりますね。皮に、スーっと包丁が入ります。」

「ブリは鮮度がいいのも美味しいですが、3~4日寝かしてもまた美味しい。私たちが子供のころは、気温が冷蔵庫ぐらいだったから、外に吊るして寝かせてたけど、最近の気温じゃ腐りますね。最近だと、熟成魚とか言って、きちんと温度管理された中で熟成させた魚なんかもありますけど。なんだか開き直った言い方でしょう、熟成魚って。わたしはあんまりオススメしないな。」

正直言って、吉田さんのおしゃべりがぜんぜん頭に入ってこないぐらい、目の前の魚たちが美味しそうすぎる。ただでさえ美味しそうなのに、吉田さんが包丁を入れるたびに、どんどんお刺身が輝いていく!マジカル!!ミラクル!!!状態。

「魚に脂がのってて、お醤油を弾いちゃうんです。そうすると魚の味が強くなってしまうから、こうしてヒダを作って、あいだにお醤油が入っていくようにしてやる。」

「三角に切ったのは、食感の違いを楽しむため。お刺身って、普通どこを食べても同じ食感でしょ。でも切り方を工夫すれば、噛むたびに食感を変えられるんです。歯ごたえも、舌の感覚も、味に直結してます。食感が変わることで、味の楽しみ方が増やせるんですよ。」

美味しいものを、最大限美味しくいただくための、研究され尽くした工夫と技。生粋の料理人、って感じがすごくするけど……

「食感のバリエーションを出すことと、お醤油がうまくのる面積を考えて、包丁を入れるんです。わたしは、システムエンジニアですからね(笑)」

なるほど、そういうところで、過去の経歴が活きてくるらしい。って、本当か!?(笑)

お刺身は、切り方だけでなく、つける薬味にもこだわりが。

「これは、私が作った柚子胡椒。黒いけど、柚子胡椒なんですよ。柚子胡椒って、お塩と柚子の皮で作るでしょ。これは、塩の代わりにお醤油とお砂糖を使ってます。火でずっと練りながら煮詰めていくので、「ひねり柚子胡椒」って名付けました。味もちょっとひねってるからね。」

コクのある甘辛醤油味に、柚子の上品な香り。ピリリと程よい刺激がお刺身の濃厚さを引き立ててくれる。とりあえず普通の醤油で魚の味を楽しみたい〜、なんて思ったけど、いやいや、ひねり柚子胡椒で食べるほうが、ここでの魚は、ずっと美味しくいただける。これは、柚子胡椒好きのレミさんにも、絶対食べさせたい!!

 

吉田さんは、囲炉裏の火をチェックして、「さてここからが本番」とばかりに、食材を焼き始めた。

魚をさばくことよりも、囲炉裏で焼くことのほうが、習得するのに時間がかかるらしい。熱くなりはじめの火ではこの食材を焼き、一番勢いのある火ではこの食材を焼く、などなど、火の状態と食材が合うベストなタイミングを見極める。弱火だか強火だかではなく、炎の一生、時間の経過で、火加減をとらえている感じ。さすがのSEさんだって、これはきっと、システムでどうこう、なんてわけにいかないはず。

たしかに、食材は素晴らしかった。壱岐グルメは「モノで勝負」というのも納得。切るだけ、焼くだけ、きっとそれで充分。でも、どう切るか、どう焼くか、それで食材の美味しさをもっともっと引き出せるってこともよーくわかった。

美味しいものが、どうして美味しいか。きっといろんな理由がある。ここビューホテル壱岐では、「食材を美味しくしてやりたい」という思いが込められるのを、目の前で見届けられるから、いろんなことがありがたくて、美味しいんだろうなあと思う。

美味しいお食事に、壱岐焼酎もすすみますよ!っといきたいところだけど、翌日の集合時間は、朝の5時。寝坊するわけにいかないので、一杯、二杯、……?ぐらいにとどめておいて、この日は、おやすみなさい。

「壱州豆腐」の美味しさは、あーっはっは!

翌朝、真っ暗なうちにホテルを出発。島の真っ暗、は、ほんとうに、真っ暗。港を通ると、漁師さんが漁の準備をしている気配。東京とは全然違う、島の朝。なんにも待ち構えてない、ただおひさまがのぼって朝になる、っていう時を過ごしに来るのも、島に来る理由になると思うなぁ。と、のんびりしたのもつかの間、川井豆腐さんに到着すると、すでに忙しく作業が行われていて、急に目が覚めた。

壱岐でタクシーの運転手をされていた川井さんは、ご病気になったお父様のあとを継いで、お豆腐やさんに。現在はお母様といっしょに作業しているそうだが、豆腐作りって、やろうと思えばいきなり出来てしまうものなんだろうか。

「まあ、仕方ないかって感じで。ずっと親がやってきたのは見てたんで。父親に習ったのは、にがりの量と、かき混ぜ方ぐらいですかね。そこを押さえれば、だいたいできます。」

話しかけるのをためらうぐらい、一秒も動きを止めることなくお豆腐を作り続ける続ける2人。それぞれ違う作業を分担して、ひとつのお豆腐を作り上げていく。「こっち終わったよ」「そっちはどう?」なんて、一言も交わさないのに、完全に動きがかみ合う。あんまりにもスムーズにかみ合ってるから、上手なお餅つきを見てるみたいだった。

なんか、一丁がデカくないですか!?そして重たそう??いろいろ気になってたら、忙しいお2人に変わって、壱岐市企画振興部の篠崎さんが、うしろからこっそり教えてくれた。

壱岐には数件のお豆腐やさんがあって、そのすべてでこの“壱州豆腐”が作られている。壱州豆腐の特徴は、やっぱりその大きさで、一丁1キロぐらいあるらしい!家庭によってお決まりのお豆腐やさんがあって、一食でペロリと食べてしまうそうだ。出来立てのお豆腐は朝のうちに壱岐島内の旅館やホテルに届けられ、朝ごはんとして出されることも多い。取材中も、まだ外は暗いのに、続々とお客さんが買いに来ていた。

「食べ方にも少し特徴があって……」と話していると、ひと仕事終えたおかあさんが、試食セットを出してきてくれた。これは、すりゴマ?

「豆腐そのままに、すりゴマと、お醤油。お醤油はちょっと甘いかもね。どうぞ、いっぱい召し上がって、いっぱい作ったから!あっはっはっ!」(黙々と作業されていてわからなかったけど、おかあさんはものすごく笑う人だった)

出来立てのあったかさで、豆の甘みがスゴイ。かなりしっかりした木綿豆腐だけど、ぼそぼそしてなくて、食感も軽い。噛めば噛むほど味が湧いてくるような濃厚さ。お豆腐が、こんなに美味しいものだったなんて!いまこうして書いてて、食べたくてしょうがなくて、壱岐まで飛んでっちゃいそうである。それか、豆腐が飛んでこないかなあ。

でも、東京でおなじものを買っても、同じように美味しいか、わからないなと思った。せっせと作られたお豆腐を、出来立てのうちに、朝からさくっと一丁食べる。それが、美味しいんだと思った。

「そうですね。時間かけて運んでも、高くなるばっかりでしょうね。その土地にはその土地の、美味い豆腐があるでしょ。うちは、島で美味しく食べてもらえれば、それで。」

わかっちゃいるけど、なんだか切ないなあ。

一丁、もしかしたらそれ以上を、易々とたいらげ、笑い上戸なおかあさんに壱州豆腐のアレンジ方法も教えてもらった。油で揚げたり、煮物に入れたり、海産物を入れた白和え(壱岐では「よごし」と呼ぶらしい)にしたり。

「まあ、ゴマと醤油かければ充分、あーっはっは」だそうで、はい、わたしも同感です、おかあさん。

イケメン宮司には会えず。

取材を終えて外に出ると、空が明るくなってきていた。次の約束まで時間があったので、イケメン宮司さんがいるとウワサの、男岳神社、というところに行ってみた。

静かな山の朝の空気。神社の奥にはゆるやかな坂道が続いていて、深呼吸しながら、なんとも気持ちのいい散歩ができた。気になったのが、道のところどころに、ごろんと寝ている岩。

「この岩、触って、なにか感じますか?」

Re島スタッフに言われて、しばらく触ってみたけど、うーん、わからん。

どうやらここには神さまが座っていて、人によっては、ビリビリ感じたりするらしい。それから、この岩の上にだけは、落ち葉が乗らないそうだ。

 

「え〜?」って、思いましたか?でもね、この場所に来ると、納得できちゃうと思う。この場所の空気が、普通とちょっと違うことは、きっとわかる。歩きながら木々の間を眺めてると、あれ?誰かと目が合った?って、感じるような。不思議な散歩でした。

「最後かもしれない商店」で聞いた勇気のはなし。

結局イケメン宮司さんには会えないまま、移動の時間に。イケメン宮司も気になるけど、次の取材先の名前もなかなか。「最後かもしれない商店」へ、向かった。

「最後かもしれない商店」、は、壱岐の柚子を使って加工品を作り、販売している。まずはどうしたって、名前の意味を聞かないことには、取材を始められません!

「これで最後になるかもしれない、ってぐらい、高齢のおじいちゃんおばあちゃんが作ってる商品なんです。平均年齢77歳、でも、みんなすっごく元気。元気じゃなきゃ、縁起でもなくて、こんな名前つけられないですよね(笑)ゆくゆくは、「最後にならなかった商品」が、壱岐に残っていくように、っていう思いを込めて、こういう名前をつけたんです。」

最後かもしれない商店を支えるのは、豊永さん。豊永さんは、地域おこし協力隊の食担当として壱岐にやってきた。自給自足ができるほど食が豊かな壱岐に魅せられ、移住。壱岐の男性とご結婚されて、ふたりのママでもある。

「もともとここにあった柚子の組合が、とても良い商品を作っていたんです。でも、おみやげとして手にとってもらえることが少なかった。だから、若い人たちにも知って選んでもらえるように、デザインを一新してみたんです。」

作られているのは、柚子シロップ、柚子胡椒、ゆべしの3種類。ゆべし、って、あんまり聞かないけど?

「柚子の皮の佃煮みたいなものですね。柚子の皮を、醤油と砂糖でグツグツ煮込んで作ります。少し苦味が出るけど、それもまた味ってことで。」

「おばあちゃん世代は、ごはんにのせたり、味噌汁に溶いたりして、食べてたみたいです。おかあさん世代になると、ふろふき大根のたれにしたり、お酒でゆべしをのばしてお肉を漬けて焼いたりと、アレンジが出てきて。そしてわたしたち世代はというと、どんどんゆべし離れしちゃってるんですよ。」

ここで、組合長の長嶋さんも登場。

「ゆべしは、あれよ、炊き込みごはんに使ったり、あとは焼酎のアテにも最高よ。あとはこのシロップね、これ飲むと、カラオケの点が上がんの!わっはっは!」

最後かもしれない、なんて、みじんも感じないぐらい、超お元気!

「桃栗3年 柿8年 梅はすいすい12年 商売やって15年 柚子の大馬鹿18年、なーんて、言うでしょ!柚子を育てるやつは、大馬鹿なのよ!隣の畑に植えてあるけど、見たことある?柚子の枝って。ちょっと、とってきてやって!」

 

ものっすごい、トゲだ!知らなかった!

「柚子は、冬には保存食にもなるし、風邪にもいいし、種は肌にもいいんだけど、なんせこのトゲがね。柚子のおかげで、わたしはもう、傷だらけ人生ですよ、はっはっは!」

この、元気なおじいちゃんがたは、豊永さんがやってきて、「最後かもしれない商店」を始めたことを、どう思ってるんだろう?

「勇気がわいたかな。まだまだ、最後にしないぞ!って、もっと元気が出ましたね。若い子も、よろこんで買ってくれるしね。」

「ところで、なんでこの時期にきたの?壱岐は、6月の下旬ごろなんか、オススメだけどなあ。メロンも出るし、生ウニも食べられるし。ビキニで飛行機のって、飛行場出たらすぐ海で泳げるよ!今度はビキニで、遊びにいらしてくださいな!」

何言ってるんですか本当にビキニで現れますよ〜困るでしょ〜、と言ったけど、わたしの手帳にはしっかりと「6月下旬、ビキニで。」と、メモが残っていた……島で会う陽気なおじちゃんおばちゃんとは、へんな約束が増えていくなあ(笑)

東京の街中でも、最後かもしれない商店のラベルを見かけるようになったら嬉しいな、と思って、東京にある食品のセレクトショップ情報を、豊永さんとやりとりしている。遠く離れた壱岐から、東京に届いて、お店に並ぶようになるまで、時間はかかるかもしれないけど、いつかどこかであのラベルを見かけて、「なんだ、やっぱり最後じゃないじゃん」って、ニヤニヤしたいなあ。

Re島めし とは

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。
島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

五島列島と対馬でいろんな出会いを生み出したRe島めしの旅。
新たな舞台は「壱岐」。
神社密度日本一の島だから、
食べものの神様もきっと楽しみにしているはず!

食育インストラクター。3児の母。各メディアでのレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての他、情報番組コメンテーター、コラム執筆など、多方面で活動中。著書に「嫁姑ごはん物語」「和田明日香のコストコごはん」など。
和田明日香オフィシャルブログ
公式インスタグラム @askawada
 
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

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