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Re島めし 壱岐編 第1話

2017.04.21 (FRI) 壱岐 Re島めし

Re島めし とは

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。
島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

五島列島と対馬でいろんな出会いを生み出したRe島めしの旅。
新たな舞台は「壱岐」。
神社密度日本一の島だから、
食べものの神様もきっと楽しみにしているはず!

食育インストラクター。3児の母。各メディアでのレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての他、情報番組コメンテーター、コラム執筆など、多方面で活動中。著書に「嫁姑ごはん物語」「和田明日香のコストコごはん」など。
和田明日香オフィシャルブログ
公式インスタグラム @askawada
 
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

Re島めしの旅は、壱岐へ!

Re島めしプロジェクト、第三弾。折り返し地点をこえて、後半に突入です。最近では、友だちや、仕事の現場で会う人に、離島のことをいろいろ聞かれるようになった。わたしだって、まだまだ離島初心者なんだけど、なんだか我が故郷のようにあれこれ語ってしまう。

先日も、Re島めしの記事を読んでくださった方に、「なんでそこまでアツくなれるの?島ってそんなにいいの?って気になって、調べちゃいました!」と言っていただいて、「まあ、行ってみればわかりますよ。」なんてえらそうに言ってしまった。わたしを通じて、離島を知ってくれる人がいる。最近そんなことをとても実感する。単純に、ものすごーく、うれしいのである。

さて!今回訪れる島は、「壱岐」。

「いき」と読みます。知ってるよ、って?わたしはなんて読むのか知りませんでした。もちろん、どんな景色で、どんな食材があるかなんてことも、まったく。

ただ、「自給自足できる島」だというウワサは、これまでの取材の中で何度か聞いていた。今までどの島に行っても、「なんにもないようで、なんでもある」ということを感じてきたけど、壱岐は特に、そうなのかもしれない?

まずは焼酎!壱岐ですから。

すこし、陽が落ちかけた頃。壱岐に上陸。現地をガイドしてくださる壱岐市企画振興部の篠崎さんと合流し、取材先へ出発。

最初に向かうのは、壱岐焼酎を造っている、玄海酒造。やったー!早速ウエルカムドリンク!って別に飲みに行くわけじゃないんだけど、なんせわたくし、焼酎が大大大好き。酒造ともなると、飲み比べ、なんてできちゃったりして?(仕事です)

そんな浮かれた気分が顔に出てたのか、お話を伺う山内社長に、会ってすぐ「アルコールお好きなんですか?」と言われてしまった。いや、好きですけど……アルコールならなんでも良いってわけじゃ……

 

 

壱岐では、400年から500年も昔から、麦焼酎が作られ続けているそうだ。この島には高い山がほとんどなく、田んぼや畑が広がる。そこで穫れる米や麦を発酵させて飲んでいたのが、「どぶろく」と呼ばれる文化。そしてそのうち、中国や韓国といった大陸から、「蒸留」の技術が伝わる。どぶろく文化と蒸留の技術がひとつになってできたのが、壱岐の麦焼酎、なのである。

建物の中に入ると、まず、ふわ〜っと甘い香りがした。やわらかくて、あったかい香り。広いスペースの真ん中には、蒸し上がったお米が広げられていた。
「3分の1が米麹、残り3分の2が麦を使うのが、壱岐焼酎の特徴です。まず米を洗って、炊飯器のようなもので蒸します。そして、こうして広げながら、菌をまくんです。」

「鹿児島では黒麹を使いますが、壱岐では、白麹というものを使います。ここで温度管理をしながら菌を繁殖させて、米、水、酵母といっしょに、タンクに入れて1週間。麦を加えて、さらに2週間。もろみ、という状態にしていきます。あっちにあるので、見てみましょうか。」

タンクの中を覗かせてもらうと、なんていうか、魔女が仕込むイケナイドリンク、みたいに、ぼこっぼこっ、と泡立って動いていた。下で火を焚いて、沸かしているのかな?

 

「いやいや、火は焚いてません。発酵してるから、生きてるんです。これは、麦を加えてから2日目の状態。午前中の方がもっとぶくぶく動いてたかな。ここの隙間から、少し手を入れてみてください。」

 

手を入れてみると、ほわ〜ん、と、あったかかった。温度管理であたためているわけではなく、アルコールが発酵することで勝手に温度が上がるらしい。菌そのものは目に見えないほど小さいのに、なんてチカラなんだろう。

「その手、におい嗅いでみてください。」

 

数秒つっこんでいただけなのに、わたしの右手からは白ワインみたいにフルーティーな香りが。それから、やっぱり、アルコールのにおいも。かき混ぜたらもっと香りがたちそう。ここで作業をされる方は、お酒強くないとだめですね?

「まあ、そうですね。それに、間違えてこの中に落ちると死んじゃいます。タンクの高さが2m50cmぐらいあって、アルコールって軽いから、人が落ちたら浮かべずにどんどん沈んでいくでしょうね。うちではないけど、酒蔵ってそういう事件もあるから。」

 

ワオ……急に足にチカラが入った……

 


次の工程は、蒸留。十分に発酵したもろみに熱を加え、アルコール分を蒸発させる。蒸発した気体は冷却装置で冷やされ、液体になってパイプを伝って落ちてくる。その液体が、焼酎、というわけ。

まるで水のように焼酎がたまっていく。夢のような量!

「これが蒸留したばかりのもの。普段飲まれる焼酎とは違います。度数も45度ぐらい。出来立てだからピリピリするけど、米の甘さも感じられると思いますよ。」

ちょっと舐めてみたけど……「いやいや、さすがに、無理〜」の、顔。舌から喉から食道から、カッと熱くなって、消毒されそう。ヤなことあったときに、クイっといくやつだ。それでも、鼻から抜ける香りはやっぱり甘い。最初にここに入ってきたときとおんなじ、ふわっとやわらかい甘さ。

「まあ、このままだとピリピリしますから、最低でも半年は寝かせてから商品になります。この香りは時間が経つとだんだん薄くなっていきます。今だけの味とも言えるかな。」

わたしはひと舐めでギブアップだったけど、普通は飲みたくても飲めない、貴重な味。しっかり舌の記憶に残しておきたいところけど、あれを味わうにはまだまだ修行が足りないようだ。ところで、いろんな種類の麦焼酎があるけど、どうやって造りわけているんだろう?

「原料によっても変えられます。例えば、米や麦を無農薬のものにするとか。麹菌の種類でも違いますね。あとは、蒸留方法の違いもあるし。貯蔵する容器、タンクなのか樽なのか、昔ながらのかめなのか、それによっても違いますね。これからご覧いただくのは、樽で貯蔵しているところです。」

重い扉の奥に、マットな黒の樽がズラリと並ぶ。なに、超かっこいいんですけど。

「一見どれも同じ樽に見えますが、色、香り、味の付き具合は全部違うんです。人間と同じ。色は付きやすいけど味が付きにくいとか、そういう個性をよく知ってやります。同じ時期に入れた樽でも、出す時期をずらすとか、調整しなきゃいけないんです。」

ウイスキーと同じで、はじめは透明の焼酎に木の色がついて、琥珀色になっていくらしい。このまま10年ぐらい、寝かせておくんだろうか?

 

「寝かせるのは、長くても3年です。焼酎の場合、あんまり色が濃くなりすぎるとダメなんですよ。昔、イギリスのサッチャーさんが、「焼酎が樽貯蔵するからウィスキーが売れないんだよ!」とか言って、色の制限を設けたんです。それで、ウイスキーのようには造れなくなっちゃった。」

サッチャー、ケチだな……。でも、ウイスキーが売れなくなるぐらい、長期樽熟成の焼酎は美味しかったってことだろうか。飲んでみたかったなあ。


さて、焼酎造りの工程は、いよいよ最終段階へ。

この部屋、なんでこんな、オレンジなんでしょう?!

「これは虫が嫌がる色なんですよ。虫が入ってこないように、電気をオレンジにしてるんです。洗った瓶に、焼酎をつめて、検品して、キャップして。最後の仕上げですね。」

瓶を磨いたり、ラベルを貼ったり、最後は手作業で行われている。容器の違いも入れると、全部で70〜80もの種類があるそう。

それだけ種類があるとなんだかややこしそうだけど、作業しているみなさんは「間違えるわけないっすよ」といった安定感で、サクサク作業されていた。ここから全国の飲んべえたちに美味しい焼酎が届けられているんだなあ。お世話になってまーす、と、つい頭が下がる。


次に案内してもらった部屋には、焼酎たちが、ズラリ並んで待ち構えてくれていた。ああ、なんて良い景色!

「ここには、アルコール度数で言うと、20度のものから43度まであります。まず、地元で一番よく飲まれている、20度の「壱岐グリーン」。隣はさっき見た樽貯蔵で、22度あるもの。ちょっと色がついてますね。25度の「壱岐オールド」に、合鴨農法で育った無農薬米を使った「大謹醸」。それから、27度、これは昔ながらのかめ貯蔵です。」

ひとくち、ふたくち、それぞれの違いをたのしみながら、ああでもない、こうでもない言って。なんてたのしいんだ!なんてしあわせなんだ!ちょっとつまみでも作って、何時間でもやっていたいぞ!(仕事です)

「弊社の創業が明治33年、壱岐の北緯が33度、ということで、33度のものも作りました。あとは、ここの前を走る国道382号線にちなんで、38度のもあって、これは壱岐でしか買えない限定品です。次はいよいよ40度、名前は「ロイヤル」。最後は、43度の、松永安左エ門。壱岐出身で、電力の鬼と呼ばれ、日本の産業界に貢献された方のお名前をいただいてます。」

この、最後のこれは、よくわかんないけど、電力の鬼の味、だった(笑)ちょっと舐めただけで、舌がビリビリ。蒸留したてのものとあんまり変わらない気がした。ちなみにわたしが一番好みだったのは、度数25度の「大謹醸」。清酒のようなお米の甘さに、香りがとっても華やか!社長は、どれがお好きですか?

「私は27度のかめ貯蔵のものですね。これをお湯割りで。壱岐焼酎、今はだいぶ飲みやすくなってますが、このかめ貯蔵のものはちょっとクセがあって、昔ながらの焼酎らしさが残ってると思うんですよ。」

ここでわたしは思い出した。別に、焼酎を飲みに、ここへ来たのではないということを。使命があったではないか。ちょっと無理矢理だけど、「お料理にも、焼酎、使います?」いちおう聞いてみた。

「野菜を焼酎で漬けたりしますよ。きゅうりとか大根とか。一晩で出来て、浅漬けみたいな感じ。あとは、焼酎を使ったケーキ、チョコレートもあったかな。ウィスキーボンボンあるでしょ?あれみたいに焼酎をそのまま入れて。」

なるほど、香り付けに、という使い方をすれば、焼酎も料理に活かせるみたい。特にスイーツは味が同じようになりがちだから、香りで個性を出せたら、新しく、おもしろく、なるかもしれない。やっぱり、その土地土地には、地元の素材を上手に活かす食べ方があるものだ。聞いてみてよかった!


外に出ると、西日に、そよそよと、気持ちいい風。

「お酒、強いですね……。壱岐の人は、一次会でひとり1本空けるぐらい飲みますけど、和田さんも負けないでしょうね。」

写真を撮りながら、しみじみ言われた。き、きっと、褒め言葉ですよね、社長!

壱岐は、地球がすごかった。

ホテルに向かう途中で、いろいろ寄り道。

壱岐ポロシャツ、東京で着てたら目立つだろうけど、着る勇気はなし(笑)

これは猿岩。

名前のとおり、おさるさんがじっと遠くを眺めているような横顔に見える。猿の親分が、壱岐に悪いヤツが近付かないか、見張ってるみたい。

ここは、鬼の足跡と呼ばれるスポット。

運が良ければ、この穴の真ん中で、海に夕日が沈む瞬間をキャッチできるらしい。言い伝えによると、鬼がくじらを捕るため、足をグイッと踏ん張ってできた穴だそう。

わたしはその説を信じたいけど、もし、鬼の仕業じゃなかったとしても、それはそれでわくわくする。ここに打ち付ける波と吹き付ける風が、途方もない時間をかけて穴をあけたところに、夕日が毎日違う綺麗な色をつけてるみたい。壮大な地球物語。やっぱり離島はロマンチックだな!

鬼の足跡の先には岩場が続いていて、豪快な波がしぶきをあげるのが見えた。見渡す限り柵はなく、こどもたちが一緒じゃなくて良かった……と、ホッとした。そして、こどもたちが一緒じゃないことをいいことに、どんどん岩場を進んでみた。おかあさんのわたしなら、「危ないから言っちゃダメ!」とか言ってる場面。でも、どうしても、断崖絶壁のその先がひと目見てみたい!

こどもたちが危ないことをするのは、そんな探究心があるからだろうな。そんな気持ちをわかろうとしないで、怒ってばっかりのつまらないママになってたかもしれない。でもどうしても、こどもの前じゃ、必死にママをやっちゃうんだなぁ。母はつらいよ。

30歳、ちょっと無理して岩を上り下りしたら、お腹が空いてきた。「自給自足の島」、壱岐での、さいしょの晩餐。どんな料理に出合えるんだろう。カンパイは、もちろん、壱岐焼酎で!

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