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Re島めし 対馬編 第3話

2017.04.06 (THU) 対馬 Re島めし

大好きなのに、そういやよく知らない。

続いての訪問先は、「あなご亭」さん。ヤッター!!穴子だいすき!!お寿司屋さんに行ったら、最後は必ずと言っていいほど穴子をいただく。穴子の余韻で帰りたいから。それぐらい好き。でも待てよ。逆に言うと、お寿司屋さんでしか食べることはないかも。家で「きょうは穴子よ〜」なんて、やったことない。

知ってるようで知らない穴子のこと。美味しい穴子料理をつまみに、地酒をちびちび飲みながら、自らメニュー開発も手掛ける店主の島居さんにたっぷりお話を聞くという、我ながらたいへん羨ましい取材の様子を、今からお届けしたいと思います(笑)

「うちの穴子はね、平成19年に商標登録をとって、「黄金あなご」という名前がついてるんです。黄金あなごはね、100mとか200mとか、深いところにしか住んでないの。直射日光が当たらないから、日焼けしない。それで金色なんだよ。普通の穴子は、日に焼けて真っ黒になっちゃうんだけど、これは違う。金色の穴子、ツタンカーメンみたいでしょう?」

なるほど。ツタンカーメンで、一気にイメージがわいて・・・こなかったけど(笑)、とても特別だってことはわかった。見た目以外には、何か特徴はあるんですか?

「普通の穴子は、頭が大きくて、胴が小さい。だけどこの穴子はその逆、胴が太くて、頭が小さい。脂のノリも全然違う。なんでそうなるかっていうと、「深海いわし」を食べてるから。穴子をとったあとにさばいてみたら、お腹の中から「深海いわし」が出てきて、わかったんだよ。」
 

島居さんが持っている筒は、穴子を捕らえる仕掛け。そして、これがその、深海いわし。実際に穴子のおなかから出てきたもの。深海いわしは、のどぐろや、まぐろの稚魚など、高級魚になるような魚もよく餌にしているとか。

 


「あなご亭」のメニューを見せてもらうと、穴子料理だけで7種類もあった。中でも気になったのは、お刺身!穴子のお刺身なんて今まで食べたこともなければ、出してるお店もなかなか見たことがない。写真を見た感じ、ふぐみたいだけど?

「ふぐって、いろんな薬味といっしょに食べるでしょう。ふぐはそれだけで食べても美味くない。黄金あなごは、薬味なんてつけずに、天日塩だけで食べるのが一番。それぐらい味が濃くて、食感も良いよ。」

そこで運ばれてくる、穴子のお刺身・・・そして対馬の大吟醸・・・最高じゃないか(涙)

まず、歯ごたえに驚く!こりっ、こりっと、ひと噛みごとに弾力がすごい。

そのこりこりをたのしんでいると、どんどん甘みが出てくる!噛めば噛むほど美味しくなって、さあ飲み込もうって時に、クイっと大吟醸・・・こどもたちよ!!!大人になるって、いいぞおおお!!!

お刺身にはコラーゲンたっぷりの皮も添えられていて、これもまたこりこりで美味。皮の他にも、骨はよく乾かしてきつね色に焼いてから熱燗に入れると、ふぐ酒なんて目じゃないぐらい美味しいらしいし、頭からも良い出汁が出るそうで、捨てるところはないのである。


厨房にもおじゃま、したんだけど、料理長があまりにテキパキ動いてるので、うっとり眺めていることしかできず。

対州そばの桐谷さんが蕎麦打ちを見せてくれたときも思ったけど(第1回参照)、プロの料理人って、とにかく道具と仲が良い。彼等のスムーズな動きを眺めていると、道具たちとの、耳では聞こえない会話や、信頼関係が見えてくるよう。そんな風に道具を扱えるようになるまでの年数や鍛錬を感じずにはいられなくて、敬服の至りである。そういえば、レミさんとレミパンも・・・いや、それはまた、別のはなし(笑)

 


「うちで一番売れてるのは、カツレツ!これは最高。タルタルつけてもいいけど、なにもつけなくても美味しいの。あとは、しゃぶしゃぶにしてもいいし、大きい穴子は天婦羅にもする。あとは白焼きですね。白焼きが一番、味が分かるかな。」

というわけで、目の前で次々出来上がるお料理を試食です。いやぁ、なんだかスミマセン!

 

 

カツになると、お刺身であんなにコリコリだったのが信じられないぐらい、身がふわっふわ。サクサクふわふわに、穴子のうま味がジュワっと加わり、もはや最強であった。

 

白焼きは、なるほど、あぶらが炙られることで甘みが増して、味がぎゅっと凝縮されて濃厚に。

 

ああ、今までわたしはなんてつまらない穴子人生を歩んできたんだろうか。これから、穴子にはちょっとうるさい女として生きていく覚悟を決めたのであった。

 

わたしのおなかは、穴子でいっぱい。その穴子のおなかは、深海いわしでいっぱい。食物連鎖で、対馬の深海とわたしの体がつながれたような気分。そんなことを考えながら宿に移動。そして、お夕食。そうです、食べることが、仕事なのです。しあわせです。

夕食でいただいた名物料理、「とんちゃん」。

醤油ベースの味噌ダレに漬けたお肉を、キャベツ、もやしといっしょに香ばしく焼いたもの。ニンニクが効いた甘辛味は、ビールやごはんがじゃんじゃん進む。どうしてこれが対馬名物?と思ったけど、そうか、すぐそばの韓国の味付けが影響してるのか!対馬に来てから、そこまで韓国の影響を感じることはなかったけど、ここへきて、「国境の島」だってこと、思い出した。

「はい!海風商事です!」って、電話に出てみたい。

翌朝、心配したお天気はなんとかもちそうで、部屋からは漁に出る船もチラホラ見えた。パアーッと晴れた空が一番好きだけど、雲の隙間から海に光がおちる、くもり空もいいな。わたしはたばこを吸わないけど、こういう景色を見てると、ちょっと一服、とか、やってみたくなる。

さて、対馬最終日。朝ごはんを終えて向かったのは、「海風商事」。目の前の港であがった海産物を加工して、島内や全国に発送している。「はい、海風商事でーす!」って、電話に出てみたくなる名前だと思いません?わたしだけ?

この日は、おかあさんが穴子をさばきまくっていた。まな板に設置された釘に、穴子の目をグサッと刺して固定し、小さなナイフでザッザッと華麗にさばいていくんだけど、その、目をグサッとが、何度見ても慣れなくて・・・こんな顔になっちゃう。

穴子さばきにピーピー言っていると、社長登場。「これ、美味いよ。」と、穴子の醤油煮のパウチを持って。

小さな販売所も併設されているので、加工された商品はここでも購入可能。東京での実験に向けて、いくつか発送してもらうことにした。

いっしょに選んでくれた社長に、これいくらですか?って聞いても、

 

「きれいなお姉さんは3割引!」

「地元のオヤジには2倍の値段で売ってんのよ!」

 

とか言われて、結局いくらなのか不明(笑)とりあえず、オススメしてくれたものを全部買って、レミさんとの実験に備えよう。

記念写真を撮りながら、今日が対馬最終日なんですよ〜、なんて話をしてたら、

 

「帰っちゃうのか〜。ここらでスナックでもやれば、大儲けできるのに!」

 

って、言ってくれた(笑)そうだな、やるなら、「スナック海風」で決まりだな。そのときは、社長のとこの美味しい海産物、3割引どころか、もっと安く仕入れさせてもらわなきゃ。なんか、たのしいな、離島って。

山を抜けたら、そこは韓国。みたいな。

次の取材先に向かう前に、観光情報館に寄り道。ここではじめて、対馬の中心部である厳原町(いづはらまち)にやってきた。今までずっと山道続きだったけど、ここは一気にひらけて市街地に。人がたくさん。しかも、歩いているのはほとんど、韓国の人だ!お店の看板や、トイレの案内、道路標識も、みんな韓国語で書いてある。なるほどここは、国境の島だ。

観光情報館で、韓国人観光客に混じって、対馬食材をリサーチ。

 

歴史を学べるコーナーもあった。遥か昔から、大陸からやってきた人が最初におり立つ場所であり、また鎖国中も貿易が行われていたほど、常に異文化との交流が絶えない場所。戦時中は、日本に侵攻してくる船との、攻防戦が繰り広げられていた歴史も知る。知れば知るほど、特異な歴史をもつ島だってことがわかる。

 

「国民のため」に始まったお醤油屋さん。

次に目指す「江口醤油」までは歩いて行ける距離とのことで、ちょっと街をお散歩。免税店なんかが並ぶ人通りの多いメインストリートを一本入ると、映画の中に入り込んだような、古い町並みが。うわあ、この看板すっごく良い・・・と、写真をバシバシ撮っていたら「ここが江口醤油さんですよ」だって。

中は蔵を改装したつくりになっていて、なんともノスタルジック。映画のセットじゃん!と興奮していたら、本当に映画に使われたことがあったのだった。

「ここの店の前で、寅さんの映画の撮影をしたんですよ。当時わたしは学生だったんですけどね。

山田洋次監督が「もしここにこの看板がなかったら、対馬での撮影はなかったよ」って言って下さいました。「それくらいインパクトのある看板なんだから、ここを大事にしてください」って。」

130年の歴史を誇る江口醤油。お話を伺った現在の代表は、五代目にあたる。

「もとは焼酎を作ってたんです。当時、焼酎は、升で売ってました。貧しい家の子が、親のおつかいで、升を持って小銭を握りしめて買いに来るのを見た創業者が、これは国民のためにならないと。そういう思いで、醤油屋に切り替えたって聞いています。」

なんだか胸がぎゅうっと締め付けられるような話だ。国民のためにはじまった江口醤油。いったいどんなお醤油なんだろう。

「色の薄い、薄口醤油をメインに作ってます。通常は、薄口醤油のほうが、濃口醤油より塩分が高いんですけど、うちのは、薄口でも塩分が低いんです。なんでそうなってるのか、私の祖母の兄弟に聞いてみたら、対馬の郷土料理に合うように、薄口醬油のほうが進化していったって教えてくれました。」

「濃口醤油だと、色が濃すぎるんです。対馬では、海のものをたくさん食べます。せっかくあんなにきれいなお魚を、きれいな色のままで食べられるように。あとは、いりやき鍋をよく作るので、お醤油で鍋が真っ黒になってしまわないように。食材の色を損なわないように、ってことですかね。」

対馬の人たちが江口醤油を進化させ、江口醤油が対馬の人たちの食生活をつくってきた。対馬にとって絶対的な存在である江口醤油にも、危機を迎えたときもあったそうだ。

「私は東京の大学に行って、そのあと横浜に10年くらいいました。30年前、30歳になるときですね。江口醤油が代替わりのタイミングで。私が戻るなら、父が継ぐけど、私が戻らないんだったら、そのまま江口醤油を終わりにする、っていう危機がありました。それで、サラリーマンやってたんですけど、帰ってきてやろうかなって思ったんですね。その話がでるまでは帰るつもりはまったくなかったですよ。」

そんな話を聞いたら、気になっちゃうのが、次の六代目のこと・・・。

「長男も、大学を出て、今東京でサラリーマンを東京でやってます。でもね、ちょうどさっき「これから帰る、一週間ぐらいこっちにいる」って、電話がありました。一週間もいてなにするんだ?って聞いたら、「そろそろ帰ろうかと思ってて」なんて言うんですよ。」

うわあ、直接会って話を聞いてみたかった!頑張れ六代目って、言いたかった!(余計なお世話)六代目は、平成生まれ。まだまだ若いのに、もう帰ってくることを考えるんだ・・・

「いろいろやりたいことがあるみたいですけどね。まだ早いですよね。対馬の現状を分かってないから、帰ってこようだなんて思えるんですよ。醤油屋の商売が、こんなに厳しいなんて思ってないでしょうね。」

ここ20年の間に、対馬の人口は25%も減少。これから減っていく一方だし、減るスピードも早くなると言われている。

「人口統計を見てると、ぞっとしますよ。ここを残していくために、これからの代も苦労するはずです。だから、何か違うことも考えていかなきゃなぁって思いますね。」

「まあ、自信を持って言えるのは、今、対馬に3万人いる中で、醤油を作れるのは、私しかいないってことです。だからきっと、なんとかして、守っていくでしょうね。」

醤油そのものも、それを進化させる日本人の食に対する美学も、古き良き蔵や建物も、代々守られる仕事のあり方も、ここにあるすべてが、日本の宝だよ!っと、お話を聞きながら、勝手に誇らしい気持ちになってしまった。

 

対馬編で出合った食材たち。対州そば、蜂蜜、椎茸、穴子、そしてお醤油・・・。この島ならではの作り方がされているもの、この島にしか残っていないもの、この島だからこそ進化したもの、「対馬だから」出合える食材ばかりだった。「対馬だから」を守っている人たちの思いも、しかと、受け止めた。

さて、それを持ち帰ってレミさんとどんな料理をすることになるか、まだまったく未知だけど、どうなったって美味しいものができるはず!レシピ編も、たのしみにしていてくださいね!

※対馬編のレシピは、5月中旬の公開を予定しています。お楽しみに!

Re島めし とは。

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。
島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

五島列島で数々の感動とユニークレシピをを生みだした
島めし旅は、いよいよ、国境の島「対馬」へ!

20代にして3児の母。6年前、料理がまったくできないまま平野家に嫁ぐ。 そこからコツコツ修行を重ね、現在は食育インストラクターとして活動中。 旬の素材を生かした、こどもと一緒に楽しめる料理を得意とし、離乳食のレシピ本の制作にも従事。 著書に、「嫁姑ごはん物語」、「和田明日香のコストコごはん」など。
オフィシャルブログ「主婦はつらいよ、たのしいよ。」
公式インスタグラム @askawada
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

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