Re島ブログPICK UP

  • HOME
  • Re島めし 五島列島編 第5話

Re島めし 五島列島編 第5話

2017.02.15 (WED) 五島市 Re島めし

Re島めし とは

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。

島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

ゆかいな島めし旅の、はじまりはじまり!

20代にして3児の母。6年前、料理がまったくできないまま平野家に嫁ぐ。 そこからコツコツ修行を重ね、現在は食育インストラクターとして活動中。 旬の素材を生かした、こどもと一緒に楽しめる料理を得意とし、離乳食のレシピ本の制作にも従事。 著書に、「嫁姑ごはん物語」、「和田明日香のコストコごはん」など。
オフィシャルブログ「主婦はつらいよ、たのしいよ。」
公式インスタグラム @askawada
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

Re島めし 五島列島編 第5話

堂崎家の朝

「おはよう。もう起きた?ゆっくり寝ててよ〜」

ああ、そんなこと言ってもらえたの、いつぶりだろ…。民泊した朝、ばっぱに「おはよう」を言いに行ったら、朝から最高に癒された。

ばっぱとテレビを見ながら、もりもり朝ごはんを食べていたら、わたしがレギュラーで出ている情報番組が始まった。「この番組、毎週水曜日に出てるからさ、ばっぱ、これから見ててね。」と言うと、

「帰っても、顔、見れるねぇ。うれしい。」と、ニコニコ。うー。泣いちゃう。

五島列島の旅、最終日。東京に戻る飛行機の時間まで、予定がぎっしりだ。朝ごはんを食べ終えたらすぐ出発。ばっぱとのバイバイも、バタバタになってしまった。でも、最後に、「頑張ってね」じゃなくて「頑張ろうね」と言ってくれたのが印象的だった。思い出すと、気持ちが強くなれそうな、思い出と、場所と、人ができた。堂崎家の民泊で、わたしがバージョンアップした気がする。

島の人付き合いでできてるジャムがあるらしい

朝いちばんに訪ねたのは、瓶詰め専門店「くまごろう」。主にジャムを製造・販売していて、材料のくだものは、すべて五島産。五島市のキャラクターである「つばきねこ」の顔が描かれたビンは、島内外の人に人気で、おみやげ屋さんでも注目を集めているそうだ。

「いや、女子はね、つばきねこがかわいいって喜んでくれるんだけど…べつに顔はいらない、って人もいるんですよ。だから普通のビンでも作って売ってます(笑)」

東京で事務職をしていた店主。田舎暮らしブームにのっかって、お父様の出身地である五島へ。名産品である椿油を扱う会社に就職した後、くまごろうを始めた。島の生活に不便はほとんどないそうで、むしろ、

「こっちだと、困ったことがあったとき、知り合いの知り合い、ぐらいをたどれば、大体のことは解決できちゃう。かといって、こっちの出身じゃないから、そこまでがっつりコミュニティに組み込まれてないのもラクなのかも。」

…だそう。それは、ジャムの材料の仕入れにも関わる。

 

五島市には、くだものがなる木を持っていても、収穫が面倒でほったらかしている人が少なくない。そういう人を、知り合いをたどって紹介してもらう。そして、手が空いた時や、品薄な時などに、自分のペースで収穫しに行くそうだ。

普通に売られているくだものを仕入れてくると、傷んでしまう前に加工しなければならず、ピークの時期は大変。その点、木にならせておけば、傷んだり腐ったりするリスクが減る。自分の家で放置していたくだものがジャムになったと、木の持ち主も喜んでくれるそうだ。みんながハッピーな、とっても良い仕組み!

くまごろうのいちごジャムは、いちごのシロップ漬け、と言った方が正確かもしれないぐらい、丸ごとのいちごがごろんごろんと入っている。粗く潰して豚肉のソテーのソースなんかに使えば、食感もアクセントになっておもしろくなりそう。いちごの他にも、季節ごとに何種類ものジャムが揃い、ラインナップを見ているだけでもたのしい。

「くまごろうは、ジャム屋じゃなくて、“瓶詰め専門店”なんです。そのほうがいろんなもの作れるかなって思って。だから、もし、くだものが採れなくなったら、魚が入ってるかもしれません(笑)」

五島産のいろんな食材が瓶詰めになって東京に届く日も遠くないかも!?ちなみに、いちおう女子であるわたしですが、つばきねこが描かれてないほうのジャムを購入して帰りました(笑)その方が1本の量が少なくて、種類をたくさん買えたから!ね!

五島うどんの課題を知る

続いて伺ったのは、「あすなろ作業所」。またまた、五島うどん関連の場所らしいけど、ここは一体…?

「NPO法人の就労継続支援施設です。要は、障碍がある方たちが、一般的な就労をするための、訓練をするところです。五島うどんを作ったり、五島市で使われるゴミ袋を作ったり、あとは、お墓参りに行けない人の代わりに、お墓のお掃除をする、なんて作業もやってもらっています。」

お話を聞いたのは、代表の土岐さん。まず気になったのは…こんなこと、失礼なのかもしれないけど、でも、障碍のある方にとって、うどんを作る作業って、難しくないのかな?

「もちろん難しいです。でも、五島市で五島うどんを作ってるのって、うちだけなんですよ。五島に来て、五島うどんがないってのは、寂しいでしょう。だから、産地を守るというか、五島うどんを盛り上げるのに一役買えたらと思って、みんなで頑張ってます。」

なんと!新上五島町に20ヶ所以上もある五島うどんの製麺所が、五島市では、ここ一ヶ所だというのだ!フェリーでたったの30分離れただけなのに、ずいぶんと五島うどんの文化が違うらしい。

「五島うどんは、作り方が手延べでしょう。時間がかかるし、人手もかかる。もともと生産量が少ないから、島の外に出にくかったんですね。出たとしても、価格が高くなる。だから、家庭で普通に食べるっていうより、観光客がわざわざ食べに来て、おみやげに買って行くとか、お中元やお歳暮で送るものっていう方が、こちらではメジャーな感覚なんです。」

五島列島に来てから、幾度となく五島うどんについて話を聞いてきた。でも、土岐さんは、今までにないタイプの考えの持ち主だった。

「たとえば、稲庭うどんは、ものすごくしっかりとブランディングされてますよね。五島うどんはまだまだこれから。今はみんなに手に取ってもらえるように、ある程度安っぽい売り方をしてるはず。でも本当は、安くなんかできないんですよ。時間も人手もかかるし、島から出さんといけんから、輸送量もかかる。きちんと、高価なものだ、って売っていかないと、ブランド化は難しいです。今は広まってるとしても、そのうちうまくいかなくなる。」

いけいけ五島うどん!!じゃない、冷静な意見を聞いたのは始めてだった。その理由は、一度島を出て、考え方を広げたことにあると、土岐さんは言っていた。

「僕が島に戻ってきたのは、5年前。以前の工場長が、30種類ぐらい、いろんな五島うどんを作ってました。じゃあ最終的にどれがよかったかって、基本のうどんなんですよ。何を混ぜたとしても、うどんとしては基本のものには敵わない。じゃあ全然ちがうことしちゃえって、粉をデュラムセモリナに変えてみました。粉がちがうと、全然ちがいますね。」

手延べでスパゲッティを作ってみたら、これが大成功。手延べ製法は、麺の表面がざらざらになる。それがソースをうまく絡めてくれるそうだ。

土岐さんとお話して、つくづく、今回のRe島めしのテーマは「五島うどん」にありだな、と感じた。東京でいちばん五島うどんに詳しい主婦(自称)として、五島うどんの新たな側面を知れたこと、うれしく思います。

魔法の水で育つ高級魚

次に向かったのは、「五島ライブカンパニー」。お話を伺ったのは、ザ!漁師!って感じの、堀口さん。

「めちゃめちゃそう言われるんですけど、別に漁師じゃないっす(笑)」

えー!漁師詐欺!(なんだそれ)

それはおいといて。五島ライブカンパニーでは、高級魚のクエを養殖しているそうだ。お恥ずかしながら、わたくし、クエを食べたことがないどころか、どんなお魚なのか見当もつかなかった。

この日は、かなりぎっしりと食材巡りの予定が入っていたので、養殖所の見学はできないことになっていた。んだけど、観光課の野口さんのナイス調整で、ちょっとだけ見せてもらえることに!急いで車に乗り込んで、いわゆる中心地から少し離れたエリアへ。新上五島町の、ヒオウギ貝の養殖場を思い出す(第3話参照)。また海の上に行けるのかな。あのときの景色を思い出すと、なんだか恋しくってため息が出た…。

 

到着してみると、想像と全然違う景色。なんていうか、釣り堀みたいな感じ。クエは怖がりなお魚なので、養殖所全体を暗くしてあげているそうだ。

「うちは完全陸上の養殖所です。海面養殖とちがって、地面を掘って地下海水を使ってます。海面だと、夏場なんか水温が高くなってえさを食べなくなるんだけど、地下海水は温度が一定に保てるんです。水質調査で、魔法の水って言われました。雑菌や重金属類も含まれてないし、絶滅危惧種の魚が住めるぐらい水が良いそうですよ。」

長崎の水産試験場から持って来た稚魚を、養殖年数ごとに網で分けて、育てている。1〜2年で出荷できる他の魚に比べて、クエは、のんびり大きくなっていくタイプの魚。4年もかけて、やっと出荷できるほどの大きさになるそうだ。

「ここは1年生の部屋。こっちが3年生で、この辺が4年生。出荷のサイズですね。」

漁師にしか見えなかった堀口さんが、今度は小学校の先生に見えてきた。小学校といえば、ここで育ったクエは、地元の学校給食でもふるまわれているそう。なんて贅沢な…!最近の給食事情ってね、ほんとに、すごいんですよ(長くなるのでそれはまた別のところで)

クエ、東京だと、どこで食べられるんだろう?と、ググってみると、高級なお店ばっかり出てきた。そっかあ、大事に育てられてるもんね。いつかクエにお目にかかることがあったら、絶対思い出しちゃうな、漁師で、先生で、最高の笑顔の堀口さんのこと。

魚嫌いを黙らす、伝統の味

お昼ごはんのあとは、練り物工房「しまおう」へ。

海に囲まれた島や長崎では、魚のすり身は超定番メニュー。獲れた魚の保存にもなるので、昔はどこの家でも自家製すり身を作っていたそうだ。

しまおうは、豊富な種類とおしゃれなパッケージで、おみやげはもちろん、物産展でも大人気。子ども向けに、すり身作り体験なんかもやっていて、地元でも愛されている。

「子どもたちがすり身を成形して、うちのスタッフが揚げてやってね。揚げたてを食べてもらったり、おうちに持って帰ってもらったり。「うちの子は魚を食べないのに、しまおうのすり身でなら魚を食べてくれる」、って言ってくれる親御さんが多くて、嬉しいです。」

魚、体にいいのはわかるし、食べさせたいんだけど、自分が料理するのも、子どもに食べさせるのも、なかなかねぇ…って思う親御さんは、本当に多い。すり身なら、骨まで丸ごと食べられるし、何より、料理への応用がめちゃくちゃきくんだな!

「出汁をとらなくても、沸かしたお湯にすり身を放り込んだら、それでもう美味しいお吸い物の完成ですよ。出汁はすり身から出ますからね。もちろん焼いてもいいし、カツみたいにパン粉つけて揚げるのも美味いですよ。お弁当にも、切って入れるだけでしょう。あとは、カレーに入れるのもオススメ。シーフードカレー風っていうかね。コクも出ますよ。」

カレー!?超意外だけど、うん、わかる、絶対おいしい。何より、すり身先輩って、わたしが愛してやまないビールとの相性が、最高じゃないですか。自分のつまみ用と、おみやげ用と、あれも、これも…気付いたら、買い物かごがいっぱいになっちゃっていた。

新鮮さに敵う味付けはなし

最後の見学は、パプリカ農家さん。

パプリカといえば…

 

 

 

はい、出た。おかあさん。パプリカ4つ持ち。ちなみにこの写真、公式の宣材です。

レミさんとおなじ、見ているだけで元気が出てくるような、まさに、ビタミンカラーに彩られたパプリカたち。彩り要員として、キッチンスタジオにはだいたい常駐している。でも、正直、我が家では、そこまで食卓に登場することはなかった。ここでパプリカと出合うまでは…

「ここには7000本ぐらい植えてあります。あちこちから、シェフの方たちが視察にいらっしゃいますよ。みずみずしい、あまい、肉厚、なんて、高評価をいただきます。特別なことは何もしてないんですけどね。」

パプリカを育てているおじちゃんたちが、いろいろ教えてくれた。すごいじゃない、五島パプリカ。やっぱり、島の土と水が良かったんじゃ?

「育ててるのは土じゃないんだ。やしがらって言って、ヤシから出来ているものなんです。作って1年目に病気にかかったので、病気を防ぎやすいやしがらに替えました。」

色の違いで、味も変わるものなんですか?って、聞いたら、「食べてみるのが一番でしょう」と、次々もいで来てくれた。もぎたてをその場で切って試食。

シャキっとかじると、まあ、なーんてみずみずしいの!みずみずしさ、真夏のきゅうりレベル!そして、あーまいっ!くだもの!これは、くだものだ!皮はパリッと歯切れよく、シャキシャキを通り越して、コリコリ。オレンジのような酸味があったり、りんごや桃のような甘さがあったり、お花のような華やかさがあったり。わたしの知ってるパプリカじゃ、ない!何かに取り憑かれたように、パプリカをかじりまくった。

「いつもは、収穫してからだいぶ時間が経ってしまったのを食べてたからでしょう。我々は、収穫して即発送を目標にしてます。少しでも、この味に近い状態で届けたいですから。それでも、やっぱりここで食べるのとは味が違うし、こうやって品種ごとに食べ比べたりってのは、なかなかできないよ〜。」

ほんとうに、そのとおり。贅沢なことさせてもらっちゃった。新鮮さには、どんな味付けも敵わないということを、改めて思い知った。食材に対する敬意を忘れたら、料理なんて上手になれない。食材を育てて、届けてくれる人たち、きれいな水や土や空気、お日様が健康的にあたる環境。当たり前と思っちゃいけないよ。島に限らず、産地を応援する方法はきっとたくさんある。東京に帰ったわたしができることは、一体なんだろう?

モヤモヤと考えていたら、「おやつにどうぞ」と、焼き芋をいただいた。目の前の畑でとれたお芋だそうだ。おじちゃんやおばちゃんたちと焼き芋を食べてたら、あー、このまんま島の子になっちゃってもいいなー、なんて思ってしまった。

食材集めの総仕上げ

空港へ行く途中で、JAごとうの直売所に寄ってもらった。Re島めしのレシピづくりにむけて、島の食材集めの総仕上げをしておきたかったのだ

あの人の、あの言葉。あそこで食べた、あの味。この旅で出合った美味しいものと素晴らしい人びとのことを思い出しながら。超本気の買い物モードです。

刻一刻と、帰りの飛行機の時間が近付いている。ひとつでも多く、島を感じられるものを連れて帰りたくって、おみやげは増えていくばかりであった…。

(五島列島編 最終話に続く)
2017年3月上旬公開予定

ページトップヘ