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Re島めし 五島列島編 第2話

2017.01.25 (WED) 新上五島町 Re島めし

Re島めし とは

島の食材に、いつもと違う視点をかけ算してみたら、何が生まれるだろう?
島の食材・食文化を再発見し、「こんなふうに食べてみたらどう!?」をつくるプロジェクト。それが「Re島めし」。

島を旅し、こんなのどう!?をつくってくれるのは、
料理界のにぎやかアイディア一家、平野レミさんと義娘の和田明日香さん。
島のユニークな食材に、人との出会いというスパイスをふんだんにふりかけて。
さあ、どんなあたらしい料理が生まれるのか。

ゆかいな島めし旅の、はじまりはじまり!

20代にして3児の母。6年前、料理がまったくできないまま平野家に嫁ぐ。 そこからコツコツ修行を重ね、現在は食育インストラクターとして活動中。 旬の素材を生かした、こどもと一緒に楽しめる料理を得意とし、離乳食のレシピ本の制作にも従事。 著書に、「嫁姑ごはん物語」、「和田明日香のコストコごはん」など。
オフィシャルブログ「主婦はつらいよ、たのしいよ。」
公式インスタグラム @askawada
料理愛好家(もともとはシャンソン歌手)。“シェフ料理”ではなく“シュフ料理”をモットーに、 テレビ、雑誌で数々のアイデア料理を発信。人間ドックで「5年間来なくていいです」と言われた健康体を武器に、 講演会やエッセイを通じて、明るく元気なライフスタイルを提案。また、特産物を使った料理で全国の村おこしにも参加。 著書は30冊以上に及ぶ。
オフィシャルサイト REMY

Re島めし 五島列島編 第2話

「島のごはんのこと、教えてください。」

マルゲリータでゆっくり朝食をいただいたあとは、その朝食を作ってくれた料理長とお話をすることができた。

料理長は、島でお話を伺う第一号。「島のこと、なんの予習もせずに来ちゃったので、失礼があったらスミマセン…」緊張気味にご挨拶すると、料理長からこんなことを言われた。

「平野さんところの、お嫁さん?」

どうやら、料理長が福岡にいたころ勤めていたイタリアン料理店に、姑のレミさんがよく来たらしい。中でも“ラビオローネ”というメニューがお気に入りで、「良い店見つけた!」と喜んでくれたと、料理長も喜んでくれていた。わたしはちょっと緊張していたけど、おかあさんの話を聞いたら、あの元気な声を思い出して、なんだか勇気がわいた。

マルゲリータでいただく食事は、五島列島産の食材をふんだんに使ったもの。料理長は、島の外で働いていた頃から、五島産の食材をブランド視していたそうだ。

「この辺は、いつ来ても必ず魚がおいしいです。夏には夏、冬には冬の美味いものがある。魚のことは漁師がいちばん詳しいから、おいしいと思うものを持って来てって、お願いしてます。」

一方で、お野菜に関しては、料理長自ら農家さんのところへ出向くこともあるそう。そもそも五島は地形的に傾斜が激しく、野菜を育てる環境にはむいていないんだとか。

「こういう野菜を作ってくれますか?って農家さんにお願いすると、みんなあんまり乗り気じゃなくて(笑) 島の人たちだから、あんまりガツガツしてないんです。それでも、1年かけて育ててくれたりね。だから、その思いも受け継いで料理を作りますよ。作り手としては、食材を作ってくれた人、届けてくれた人の気持ちものせないといけないな、と。」

料理長が以前勤めていたのは、福岡のイタリアン。その前は東京にもいた。ずっと都会で活躍してきたようだけど、島に来ることに、抵抗はなかったのかな?職場も、生活も、ガラッと変わったと思うけど、今はどんな心境なんだろうか。

「前は、競い合って料理をしてました。戦場に料理をしに行くようで、他のやつよりすごいものを作ろうって、お客さんを攻めるような感じで。でも、ある人との出会いで、考え方が変わったんです。その人は、やさしくて、すいこまれるような料理をする人でした。それから、競い合う気持ちが消えたんですよね。」

「今がいちばん楽しいかな。余裕があって、ゆっくり作れるんですよ。自分の目で海の状態を見て、魚のあがりを想像したり。理想と違う野菜ができてもどんと構えられる。どんどん自分も自然の一部になっていってます。」

それは、やっぱり、島ならではの、のんびりとした時間の流れのおかげ?

「というより、自分が変わったタイミングと、ここへ呼ばれたタイミングが合ったのかな。俺しかいないな、って感じでした。こっち来る時は、いろんな人に反対されたり、お客さんに止められたりもしました。でも、田舎に行くからって、落ちこぼれるわけじゃないんですよ。落ちこぼれたから田舎に行くんでもない。ここから発信できることは、都会から発信するより、もっとすばらしいことがあります。」

…もう、五島はあなたに任せます!!! なんて、どの立場から言うんだって感じだけど、本当に、心の底からそう思ってしまった。島からの発信の一端を担うために、わたしはここへやってきたんだ…急に使命感がわいてきた。

料理長には、Re島めしのヒントになるような、島独特の味付けや食材のことも教えてもらった。どうやら、「五島うどん」なるものがこの島の名物で、マルゲリータでも、五島うどんを使った新メニューを開発中なんだとか。さっそくその五島うどんのことを学びに、「五島うどんの里」を目指すことにした。

「島はすばらしい。そして、島はおなかがへる。」

五島でのドライブは、とにかく気持ちが良い。だって、この景色!!

もう、何色、とか言えない。遠目からでも底が見えるぐらい透明。この海を眺めているだけで、体の中がすっかり浄化されると思う、たぶん。

しかも、ふらっと、こんな素敵な教会が現れたりする。なんなの五島。素敵すぎるんですけど。

蛤浜(はまぐりはま)というビーチにも寄り道。今まで、ビーチにビールは付き物だと思ってたけど、こんなに綺麗だと、もはやビールもいらんな。ああ、バシャン!と飛び込んで、全身でこのきれいな色を味わいたかったなぁ。

きれいな景色、きれいな空気って、なぜかお腹が空いてくる。ドキドキして、たくさん深呼吸するからだろうか。自然の力に、おのれの生命力を呼び起こされるからだろうか。とにかく、お昼の五島うどんへの期待はどんどん高まっていった。

「五島の、推し“麺”」

五島うどんの里に着くと、観光課の横浦さんが待っていてくれた。ここから先のナビゲーターだ。横浦さんに案内されてお食事処に入ると、おじさんたちが大きくて真っ黒な鍋を囲み、うどんをすすっていた。鍋を囲んで、うどん?なんだか、ランチには珍しい光景。

「あれが、“地獄炊き”です。」

地獄炊き!?これまたキャッチーなネーミングだこと!

「五島うどんと言ったら、地獄炊きなんですよ。」

ということで、五島のやり方に習って、わたしも、地獄炊きを作らせてもらった。作るといっても、お湯が沸いた大鍋に、うどんを放つだけだけど。

ところで、味付けは?

「あご出汁ベースのめんつゆにつけて食べます。それか、生卵を溶いて、チョーコー醤油をちょろっと入れた中につけて食べるのも美味いんですよ。」

あご出汁のめんつゆが美味しそうなのは言うまでもないが、その、チョーコー醤油って、一体?

「知らなかったですか?長崎の人は、子どもの頃からずっとチョーコー醤油で育ちます。チョーコー醤油の味に慣れ親しみすぎて、他のメーカーの醤油を食べると、すぐわかっちゃいます。大人になって、長崎から出てった人も、実家から送ってもらうんですよ。やっぱりチョーコー醤油じゃないとしっくりこない、って。」

自分のルーツを感じる醤油があるって、なんだかとってもうらやましい。きっと、長崎の人たちにとって、それはそれはホッとする味なんだろうな。

お喋りしている間にうどんが茹で上った。でも、ザルにあけてお湯を切ったりせず、鍋から直接麺をすくって食べるみたい。うどんは鍋に入れっぱなしなわけだけど、のびてしまわないんだろうか?

「五島うどんは、手延べ製法って言って、よりコシが出るように、寝かせては延ばし、寝かせては延ばしをくり返してるんですね。だから茹でても、あんまり延びないですよ。あとは、これまた五島産の、椿油を練り込むことによって…」

出汁の香りにそそられて、横浦さんの説明を若干聞き流し(スミマセン)、うどんをすする。なんて言うか、すすりやすさは蕎麦のようだけど、弾力はうどんで、喉越しは素麺…いろんな麺の良いとこどりのような感じ。美味しい!するする食べられて、お箸が止まらなかった。

五島発信の食材は数あれど、五島うどんは、流通させやすいという点から、島として特に力を入れて発信していきたいそうだ。Re島めしを作る上で、五島うどんはマストな食材になるかもしれないな。

「いいもの見つけた。」

お食事処に併設されている観光物産センターで、おもしろいものを見つけた。

GOTO CAP!…も、そうなんだけど、これ。

「ふし麺」だって。これ、なんですか?レジにいたおかあさんに聞いてみた。

「五島うどんを延ばして干すときにね、棒にかけておくでしょ。棒にかかってる部分は、くるっと曲がっちゃうし、平らに潰れるから、うどんにはならないのよ。そういうとこばっかりを集めたのが、ふし麺。」

なるほど!うどんにならなかったところも捨てちゃうんじゃなくて、これはこれで食べるのか。素晴らしい。で、島のみなさんはどうやって食べるの?

「味噌汁の具でしょう。あとはグラタンに入れたり。マカロニのかわりよ。まあ、そんぐらいじゃない?」

そうなんだ…もうちょっといろいろあっても良いのにな…なんだか料理家魂がくすぐられた。これは是非、買って帰って実験してみよう。

 

「島ならではの食文化」

「五島の料理を知るには、この人の話を聞くと良いです。ちょっと、おしゃべりが長いかもしれないけど(笑)」

と、横浦さんが次に紹介してくれたのは、上五島旅館組合の組合長、道津さんという方。前田旅館という宿の女将をされているそうだ。「誰とは言いませんけど、おしゃべりなおばちゃんには慣れっこだから、全然大丈夫ですよ!」と、早速前田旅館に向かった。

「寒くない?寒くないか、若いもんね。今日はさ、朝から5軒分も“かんころ餅”作ってたから忙しくって、適当な格好でごめんなさいね、で、これがそのかんころ餅ね、焼いても美味しいんだけど、つきたてだから、このままで美味しいからね。これ食べながら、まぁなんの話もできませんけど、あ、お茶持ってくるわ!」

自己紹介もままならず、どんどん道津さんのペースに巻き込まれていく。この感じ、なんだかよく知ってる感じだなぁ。すごく好き。そしてお茶うけに出してくれた「かんころ餅」とやらも、すごく好き。これもまた、なんだかよく知ってるような味がした。

「“かんころ”っていうのは、さつま芋をスライスして、ゆがいて、干しておいたもの。そのかんころを水で戻して、餅米と蒸して、餅みたいについて、型に入れたのが、かんころ餅。どんな芋を使うとか、お砂糖やゴマの量も、そこの家のやり方があってね。一族の味、って感じで、親戚が集まっておしゃべりしながら作って、絆を深めるのよ。」

なんでわざわざ、芋を干したり戻したり、面倒な作り方をするんだろう?

「昔からこの島にはいーっぱい芋があったのよ。その芋をどう使うかっていうことと、あとは保存目的よね。ここは島だから、船が欠航しちゃうと食べものが届かなくなるじゃない。」

「保存」は、島の食文化にとって、大きなキーワードなんだな。他には、どんな保存食があるんですか?

「平切り大根もそうよ。大根を平たく切って、生のまま干すの。平切り大根はわたしが商品化したから、今度買ってね。あとは、アゴもそうね。」

「わたしは七輪で焼くけど、焼いたアゴをこうやって、藁で組んだ紐でくくって干しとくのね。こうして吊っておけば、並べて干すより場所をとらないでしょ。藁で紐を組むのは大変なんだけど、だからってナイロンの紐じゃダメ。アゴは乾いて縮んでいくから、ナイロンだとスルッと落っこちるの。藁ならひっかかるでしょ。昔の人の知恵がいっぱい詰まってるわけよ。」

この辺のおうちはみんなアゴ出汁が基本だそう。道津さんのようにすべて手作りでアゴ出汁を作っている人は少ない。でもこんなことも言っていた。

「最近スーパーなんかで若いママたちの買い物かごを覗くと、みんなちゃんとアゴを買ってるのね。ちゃんと出汁をとるんだなぁって嬉しくなります。これを入れると味噌汁ができます、なんて、もう味付けまでしてあるのも売ってるけど、そういうのを買うんじゃなくて、ちゃんと自分の家の味で作ってるんだなぁって。」

レミさんがよく言ってる。出来合いのものを使って、あそこんちもそこんちもあっちもこっちもみんな同じ味になっちゃったら、そのうち人間みんな同じ顔、同じ形、同じ考えになっちゃう。そんなつまんないことないし、それじゃあおふくろの味が、ふくろの味じゃない。って。

わたしも思う。おかあさんが死んだ時、顔や声を思い出したり、形見ができたりする。中でも、「おかあさんが作るあれ、美味しかったなぁ。」って、味を思い出すときって、自分の体の中におかあさんを取り込めてる感じがする。それをまた、子どもたちに伝えていくから、遺伝子みたいにどんどんつながっていく。その味はやっぱり、おかあさんじゃなきゃ作れない味であってほしい。

「そういうことを、若い人が言ってくれるのを待ってた!」

と、道津さんは背中をバシバシ叩いてくれた。なんか、来て良かったなぁ、と思えた。

Re島めしの食材に使おうと思っている五島うどんについて聞いてみると、道津さんも同じように、五島うどんの新しい食べ方を模索したときがあったそうだ。

「個人的には、アゴ出汁にネギだけのシンプルなのが好きだけど、それだけじゃインパクトが足りないってみなさん言うの。だから、イタリアンの先生の勉強会に行って、パスタの代わりにうどんを使って作ってくださったのも食べてみた。

でも、やっぱり、アゴ出汁は使いたくてね。アゴ出汁とトマトをベースにしたものを考えて出してたんだけど、あんまり受け入れられなかったのよ…なんでだろうね?」

そのレシピ、いただいて帰ろう。ものすごくヒントになりそう。五島うどんを、アゴ出汁とトマトで、それとあとは…?五島の食材、もっと知りたい!

道津さんにたくさんおみやげをいただいて、最後はハグまでして、お別れした。道津さんのごはん、食べたかったなぁ。数時間しか会ってないのに、実家に帰ったような気持ちになって、つい「いってきまーす!」と、言ってしまった。

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